ライフデザイナーだいごの四方山コラム
四方山コラム
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コラム vol.50
”ガロ”というマニアックな漫画雑誌をご存知ですか?

安藤忠雄グランフロント

”ガロ”という現在は廃刊となった伝説の雑誌をご存知でしょうか?現在刊行されているメジャー雑誌では規制されてしまいそうな無限の表現の塊でもあるガロとは一体どのような雑誌だったのか?家の掃除をしていたら昔古本屋で購入したガロが出てきたので少しご紹介したいと思います。

『ガロってどんな雑誌?』

 1964年に青林堂により創刊されたガロ。その名前の由来には様々な意味合いが込められているそうですが個人的には「我々の路」という説が好きかもしれません。

 掲載されている作品はいわゆる「サブカル系」に分類される、もやーっとした読後感のある内容のものが多く、それがまた一定のコアなファンを獲得しており特に全共闘世代と呼ばれる団塊の世代の間ではバイブル的存在だったそうです。

 ガロを一躍有名にした作品は白土三平氏の「カムイ伝」が知られていますが、ガロの歴史はカムイ伝の連載期と連載終了後に大きく分類されます。実際にガロ連載終了後は売上が大きく低迷しその経営をPCソフト開発会社に委ねる事になります。

 雑誌のスタイルは一言でいえば「自由」であり、作家が自由に好きなものを書くことができたため多くのオリジナリティを持つ作家が集まりましたが、反面商業的には厳しかったようです。

『ガロ出身の作家といえば』

 では、どんな作家がガロで書いていたかといえば白土三平を筆頭に、ゲゲゲの鬼太郎で有名な「水木しげる」、南くんの恋人の「内田春菊」、現在はテレビタレントとして活躍している「みうらじゅん」「蛭子能収」など一度はどこかで耳にした事があるような作家を輩出しています。

 みうらじゅん氏は「サブカル」ブーム、昨今のひこにゃんやふなっしーなどの「ゆるキャラ」ブームなどの火付け役としても有名ですね。

 こういった表舞台に進出した作家もいれば、そのまま人知れず消えていく作家というのも数多くいるのは世の常ですが、後者で私が一番好きな作家が「つげ義春」氏です。

 代表作は「ゲンセンカン主人」「ねじ式」と寡作でありながらそのインパクトは他の追随を許さない作風で黎明期のガロを牽引した作家として多くのファンを獲得しました。

『つげ義春作品との出会い』

 つげ義春作品との出会いは、大学生の時市立図書館のマンガ本コーナーに置いてあったものを暇つぶしに手にとった事がきっかけでした。当時、毎日漫画喫茶に通って店にある漫画を全て読みつくす事を目標にするなど、「モルダー、あなた少し疲れてるのよ」状態だった私はつげ義春から「ガロ」という雑誌の存在を知ることになります。

 つげ義春の作品はお世辞にも明るいとはいいがたいものですが、その世界観は「シュール」の一言です。「海」「旅」「夢」、この3つのキーワードがつげ義春作品を構成している3大要素で、それはどうやらつげ義春の生い立ちや歩んできた人生そのものであるようです。

 幼少期に父親を亡くし貧しい幼少期を送ったつげ義春は「空想」の世界に埋没するようになり、次第に「海」への憧れを抱き船員を志したり密航を企てるようになります。その後、メッキ工場で働きながらも一人で空想して絵を書いていられる職業として漫画家を選んだ事がガロでの連載に結びつきました。連載中には「旅」に憧れるようになったなど、「現実逃避」を作品に昇華させた作家ともいえるのではないでしょうか。

 当時、お豆腐メンタルの私はこの耽美な世界観が妙にフィットして何かむさぼるように読んでいた気がします。そして、ふと大学卒業から現在に至るまでの自分の行動と考え方を振り返るとまんま「つげ義春」の世界だったと変に納得してしまいました。そして、見つけたガロはそっと棚に戻して見なかった事に。

 もし、古本屋でガロを見つけた際は是非一度購入されてはいかがでしょうか?知らず知らずのうちにガロの世界に足を踏み入れてしまうかも?

 なんと、何気に50回に到達していました!スランプが常態の私には奇跡のような話です、これからもどうぞご愛読いただけるよう何卒お願い致します。

編集者のつっこみ

編集者のつっこみ

自分の価値観の基板になった懐かしの本や雑誌。郷愁を感じますね。連載50回おめでとうございます。

コラム vol.51 "ガロ"スウェーデン住宅。暖かい北欧住宅の特徴