

ピカソソファができるまで
ピカソソファは座面の高さが12cmとかなり低めですが、木枠とウレタンを組み合わせた中材(※)の構造により、床の硬さがおしりに伝わらず、ほどよく硬く、ほどよく柔らかい座り心地でおくつろぎいただけます。
そんなピカソソファの中はどうなっているのか、素材、構造、製造工程を順に追いながらご紹介いたします。
※中材…ソファの中身。カバーをかける前の、素材を組み合わせた状態のもの。


構造の特色
木枠を使用しているため、これだけ低くとも座り心地はしっかりソファ。座面部の木枠にチップウレタンを組み込み、木枠の耐久性と座面の弾力性を向上しています。また、3種のウレタンの層で、適度に硬く、柔らかい座り心地に。
素材と役割
合板で形成されているソファのベースとなる部分。体をしっかり支えるとともに、木枠の重みでソファをずれにくくします。
中材のコア部分に中硬度のチップウレタンを使用。しっかり硬めでへたりにくく、ソファの耐久性や弾力を高めます。
チップウレタンの硬さを軽減させる柔らかなウレタン。座り心地のクッション性を高めています。
スラブウレタンAよりさらに柔らかいウレタン。表面に近い部分に使用し、座った瞬間の柔らかさを実現しています。
座面の1〜4を覆う布製のカバー。中材とカバーの両方を保護し、ソファ全体の耐久性を高めます。
背もたれ部カバーには綿を挟んで縫製するキルティング加工を採用。カバーの「よれ」を防ぎ、耐久性を向上します。もたれ心地も柔らかに。
座面・背もたれの底面に使用。カーペットに多く使われる素材で、湿気に強く通気性が高い。カバーのマジックテープ部を貼り付けて、カバーを固定させます。
座面部と背もたれ部をジョイントさせるための部品。背もたれ部底面のボルトを、座面裏側からノブナットを締めて固定します。
ピカソソファができるまで ①
木工
ピカソソファ(L型) 座面
10種類以上の細かい木材(合板)を組み合わせて、ピカソソファのベースとなる木枠を作ります。
使用するのは木工用ボンド、タッカー、トンカチなど。タッカーだけでは使用年数を経ると針が緩み、きしみ音の原因となるため、ボンドでしっかり接着します。

ピカソソファ(L型) 座面と背もたれのベース部分
写真左のちょっと浮いている部分が背もたれ側の木枠です(ページ上部の「素材と構造」を参照)。ピカソソファの座面と背もたれはネジでジョイントさせますが、現段階では仮留め。
ピカソソファができるまで ②
下張り
ピカソソファ(L型)座面:2層目のチップウレタンを接着しているところ
「下張り」とは木枠にウレタンを接着する工程のことです。吹き付けた接着剤の量や位置を確認できるよう、接着剤は緑色に着色されています。
まず、座面の木枠の中にチップウレタンをはめ込み、もう一層上に重ねます。ウレタンの端材を固めて作るチップウレタンは耐久性と弾力性が高いため、座面と背もたれのコア部分に使用しています。
チップウレタンだけでは硬すぎるので、上にスラブウレタンを2層重ねます。これにより、座面のクッション性と柔らかさが高まります。

ピカソソファ(L型)座面:1層目のスラブウレタンを接着しているところ
木枠の外側にスラブウレタンを貼ります。木枠を保護するとともに、足をぶつけても(木枠に直接よりは)痛くありません。

ピカソソファ(L型)座面
続いて、背もたれ側の木枠とチップウレタンを接着します。ぴったり合うよう、慎重に。

ピカソソファ(L型)背もたれ:裏返した状態
背もたれのチップウレタンをスラブウレタンで覆います。もたれ心地がよくなるのはもちろん、カバーをかけた際にフォルムが少し丸くなり、ソファが優しい印象になります。

ピカソソファ(L型)背もたれ
ピカソソファができるまで ③
生地のキルティング加工
まずは、生地と裏地の間に綿を挟んで縫製する「キルティング加工」を施します。ピカソソファの場合、この加工を施すのは背もたれ側のカバーのみ。
キルティング加工を施すことで、生地にボリュームが出て座り心地が柔らかくなり、生地がよれにくくなるためカバーの耐久性も上がります。

使用する糸の色は生地に合わせて変えています。
この機械は40年以上の年代物で、日本にはもう数台しか残っておらず、マニュアルもありません。さらに季節や湿度、生地と糸の相性によりコンディションが変わってしまうほど繊細です。
操作やメンテナンスが非常に難しく、この工程に携わる職人たちは様々な試行錯誤を何度も繰り返したとのこと。「大変ではあるけれど、機械の調子が出た時は涙が出るほど嬉しい」と話してくださいました。
新しい機械を導入すれば、手が掛からずメンテナンスも楽になるかもしれませんが、古い機械を長く使い続けることで環境保全や商品のコストダウンに繋がると考え、今も大切に使い続けています。
職人曰く「この機械は手のかかる生き物のよう」。様々な理由はあれど、シンプルに仕事仲間としての愛着もあるのでしょう。この工程に職人の心がこもっているのを感じる印象的な言葉でした。
ピカソソファができるまで ④
生地の裁断
カバーに使用する生地をこちらの機械で裁断します。
背もたれ側のカバーはキルティングを施した生地を使用するため、裁断後の生地のキルティングのラインがまっすぐになるよう、スタート位置に気を付けてセッティング。裁断しやすいように一度バキュームでぺたんこにします。(ぺたんこすぎるとキルティングのラインが見えなくなってしまうので、調整しながら)

こちらは裁断後の様子。クッキーの型抜きのようです。
起毛している生地は、毛の流れる方向にも気を付けて。
座面は手前から奥に向かって毛が流れるように、背もたれは上から下に向かって毛が流れるように、座る瞬間に摩擦が起きない毛流れになるよう裁断しています。
キルティングが入った生地の裁断は難しく、以前は手作業でカットしていましたが、キルティング生地を使用したソファの人気が高まったことを受け、作業効率を上げるために機械化することに。
職人たちが機械の設定を微調整しながら試行錯誤を繰り返し、今はきれいに、かつての1/3の時間で裁断できるようになったそうです。
ピカソソファができるまで ⑤
生地の縫製
裁断した生地をカバーに仕立てます。
ピカソソファのカバーは細かいパーツをたくさん組み合わせて出来ているため、縫製に手間と時間がかかります。
ちなみにミシンに被っているシャワーキャップは、精密な機械なので埃などが入らないようにするため、また、潤滑油が飛んでくるのを防止するためです。

座面側のカバーは洗う頻度が高いことを考慮して、すべての辺にオーバーロック(布の端がほつれないようにする「かがり縫い」のこと)をかけます。
続いて背もたれパーツの縫製です。切りっぱなしのままではキルティングの糸が端からほつれてしまうため、背もたれパーツの端を縫い合わせます。

背もたれのカバーにはキルティング加工が施されている。
カバーをソファに固定させるためのマジックテープは、ただでさえ厚みのあるキルティング生地を折って二重にし、その上に縫い付けるため、とても分厚く縫製が難しいそう。縫いズレが起こらないよう、こまめに針の高さを調整しながら作業していました。
ピカソソファができるまで ⑤
上張り
ピカソソファ(L型)背もたれ:裏返した状態
「上張り」は仕上がりに関わる大事な工程なので、検品を兼ねて、糸の飛び出しがないか、縫製がきれいか、細かい部分をチェックしながら作業を進めていきます。
上の写真は、タッカーを使って背もたれの裏面にニードル式不織布を貼っているところ。
※ 2020年7月より、裏面の素材をループパイル材からニードル式不織布に仕様変更。このページに掲載している写真はループパイル材を使用しています。
貼り終えたら、カバー側のマジックテープを貼り付け、ソファにカバーを固定させていきます。

ピカソソファ(L型)背もたれ:裏返した状態
カバーを引っ張り過ぎると、カバーを傷めることになり、ソファの仕上がりも少しいびつになる。引っ張りが弱いと、座面にカバーが余ってパンっと張らず仕上がりがきれいにならない。絶妙な力加減で、ソファの裏面にソファカバーのマジックテープを少しずつ貼り合わせていきます。
負担がかかりやすい座面には、中材とカバーの保護のためにインナーカバーを取り付けます。

ピカソソファ(L型)座面
座面の裏面にもニードル式不織布材を。

この素材は通気性が高く湿気に強く、中材の内部に湿気がこもりカビが発生するのを防ぎます。
座面と背もたれそれぞれにカバーを取り付けてから…

奥:ピカソソファ(L型)の背もたれ、手前:座面
最後に、座面裏面のニードル式不織布をめくって、中のネジで座面と背もたれをジョイントさせます。

ピカソソファができるまで ⑥
検品・梱包・配送
下記の項目を確認した上で、梱包直前の状態を写真で記録し、梱包します。
・音が鳴らないか
・キズ、汚れ、いびつな部分が無いか
・生地に匂いが付いていないか
・注文内容とソファのサイズ、数、生地が合っているか

ダンボールに送り状を貼って、あとは配送業者さんのお仕事です。細かいパーツを組み合わせて、たくさんの工程を経て、職人たちが手をかけて完成するピカソソファ。お客様の素敵な床暮らしに寄り添えますように!
(取材&文:水嶋美和 撮影:森岡祐加 / 2020年3月)
※ 製造の効率化や商品改良のため、商品の仕様を適宜に変更しております。座り心地が変わる、デザインが変わる、価格が変わるなど、影響の大きい仕様変更を行う際はHAREMのHPにて詳細を掲載いたします。