中の人インタビュー:HAREMのこれまで、今、これから。

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2024年11月で、HAREMは20周年を迎えました。パチパチ!

『HAREM』の始まりは2004年、インテリアデザインを主な事業とする『株式会社 NORTH LAND DESIGNS.』のインテリアブランドとして誕生し、2008年に今のローソファ専門ブランド/ショップになりました。
ローソファの企画・デザイン・販売を中心に行い、商品の製作は国内の家具工場に委託しています。

と、沿革をざっとまとめるとこんな感じ。
でも、どんな集団なのかはこれだけではちょっとよくわからない。

そこで20周年を機に「HAREMの中の人、こんな人!」をお伝えすべく、それぞれにインタビューして回ります。
HAREMって、こんな会社!

HAREM、20年間の歴史(てんやわんや)について、詳しくはこちらから!

HAREM 20周年特設ページ

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第一回は『HAREM』の経営を担う岸宗大輔にお話を伺います。

2024年12月の会議にて撮影。
写真右上、ガッツポーズが岸宗です。

父は80年代よりローソファのデザイナーとして活躍している伊藤浩平(写真中央)。
1991年に『株式会社NORTH LAND DESIGNS.(以下、NLD)』を創業し、2004年に『HAREM』を立ち上げた張本人です。

で、その長男として幼い頃からローソファと戯れてきたのがこちら岸宗。現在の『HAREM』の経営は彼が担っています。

だけでなく、ソファもデザインします。
だけでなく、経理も総務も人事もやります。
だけでなく、コラムも書くし、販促も考えるし、たまにショールームに立って接客もやります。もう全部やる。

モデルもやる

ちょっと心配になるぐらい働いて、頭の中はローソファ!ローソファ!ローソファ!な人。
その原動力は何?HAREMをどこに連れて行く気なの?この機にじっくり話を聞いてみます。

HAREMの真ん中にいる人は、こんな人!

岸宗、ローソファで大きくなる。

⸺ まずは懐かしい写真から。ちょっとデザインが違うけど、これは今もHAREMで取り扱っているスキップソファですね。

若かりし頃の岸宗
背もたれの形状が違うスキップ2ソファ
「スキップ2」。現在販売中の「スキップ1ミニソファ」より尖っている(背もたれが)。

そうですね。自分の家にもおばあちゃんの家にもあったし、小さい頃の思い出にはいつもスキップソファがありました。

スキップを裏返してドラゴンボールの筋斗雲みたいにして乗ったり、縦にして布を被せてテントみたいにして遊んだり、あまりソファとして認識してませんでしたが。

⸺ ソファというか、アスレチック?

そうそう。子供って何ででも遊べるし、どこででもくつろげる。その原体験が「つみきソファ」をデザインする時のヒントになりました。

つみきソファ

昔のソファは家長や大人が座る場所ってイメージだったけど、うちのスキップソファは大人も子供も垣根なく集まれる場所だったので、自分が作るソファもそういうのがいいなって。

つみきソファ / 神奈川県 K様

⸺ 2009年にデビューした「つみきソファですね。ソファのデザインには元々興味があったんですか?

いや、全然。
高校の頃は「部屋にソファがあるってステータス!」と思って、父の仕事の試作で余ったソファを貰って、狭い部屋に無理矢理置いて、すぐジャマになって返して(笑)。それ以降はソファへの憧れは特に無く。

翻訳家になりたいと思って語学系の大学に行ったり、漫画家になりたいと思って大学を中退してイラストレーター科がある専門学校に行ったり、進学も全く別の道でした。

岸宗、経営する。

⸺ 伊藤社長(NLD代表)が『HAREMを立ち上げた頃、岸宗さんは22歳ですね。

『HAREM』もこの時はまだカフェ兼インテリアショップで、雑貨も扱ってました。

在し日の『HAREM』。のちの大阪・堺ショールーム。

岸宗さんが『HAREM』の経営に関わるようになったのは、どのようなきっかけで?

まず、当時「速読術」ってのが流行ってたんですよ。

⸺ うわ、懐かしい!本を爆速でめくって読むやつですよね。

速読術のテキストを買ったら速読の練習用にマーケティングの本が付いてきて、そこから「マーケティング面白いな」「経営者っていいな」と思い始めました。

⸺ おっと、意外なきっかけ。

当時はITバブルが弾けた後で、ネット通販が当たり前になりつつある頃でした。
よし!ネットで稼いで、空いた時間で漫画を描こう!と、当時通ってた専門学校のWEB科の先生にWEB制作を習って、『HAREM』のHPを作って商品の紹介を始めました。

そのうちHPを見て来店してくれる人が増えてきて、常連さんも付いてくれるようになって、店舗で接客をするうちに物を売ること自体が楽しくなってきました。

そうしているうちにショップの店長が母から僕になって、採算のとれないカフェ事業を閉めて、しばらく雑貨屋として続けていたけど近所に大きなショッピングモールが出来て、どんどん経営が厳しくなって、インテリアショップとしての『HAREM』は終焉を迎えます。

⸺ そんな急に…畳み掛けるように…。

インテリアショップからソファ専門店へ。

⸺ そこからソファ専門店にリニューアルしたのは、どういう流れで?

ネットでの集客が今みたいに当たり前じゃなかった当時、HPに載っているソファを見るためだけに来店してくれるお客様がいたことが大きかったです。
このままでは大型ショッピングモールに勝てないし、ソファに絞れば何とかなるかも…?と思えました。

その頃に「ニッチマーケティング」という一点突破的なマーケティング手法が出てきて、「この本に書いてあることをとにかく試したい!」って気持ちも強くありました。

⸺ インテリアショップを閉めた時に「もう経営はこりごり!」とはなりませんでしたか?

もちろん思ったけど、この頃はまだ若くて好奇心が優ってたし、「とにかく稼ぎたい」ってギラギラしてました。

『HAREM』のHP運営とは別にWEBデザインの仕事を他社から請け負ってて、異業種交流会に顔出して「なにわのセールスマーケター ほんまに売れるHP作りまっせ!」みたいな名刺を作って自分を売り込んで。

⸺ めっちゃギラギラしてる!WEB制作の仕事は『HAREMの中で?

ですね。当時はソファ通販事業部とWEB制作事業部があって、どっちも僕のほぼワンマンなんですけど。
WEB制作事業部では他社のHP制作をしたり、IT系の派遣会社の人材育成にも携わったり、色々な相談を受けていました。

WEB制作の経験を重ねるうちに自分自身のデザイン力が上がってきて、ソファ通販事業部が好調になって、こっちだけで売上が立つようになったのでWEB制作事業部は終焉を迎えました。

⸺ また終焉を迎えた。当時、ソファ通販事業部で主力だったソファは?

今もある「ロハスソファ」ですね。一般的なソファの半分ぐらいの高さで、ローソファの知名度が低い当時、インパクトがあったんだと思います。

ロハスソファ(2012年撮影)

「ロハスソファ」でニーズを肌で感じたことから、「ソファ専門店」から「ローソファ専門店」に舵を切り始めます。

ソファ専門店からローソファ専門店へ。

⸺ 「ローソファ専門店」になるには、どういう経緯があったのでしょうか。当時のローソファって、今よりずっと珍しかったですよね。

今でこそ「HAREMのソファは高いね」と言われますが、昔は3万円ぐらいの安いソファも取り扱ってたんです。
でも利益率が悪いし、品質も値段相応だからクレームも多く、割に合わないので徐々にソファの種類を絞っていきました。

そうしてるうちに、自然とロータイプのソファばかり残りました。
今もある「ロハスソファ」「スキップソファ」、今は無いけれど「カーヤソファ」の前身である「ユニゾンソファ」、「かこみソファ」の原型となる「タイタンソファ」がそれですね。

スキップ1ミニソファ(2012年撮影)
ユニゾンソファ(2012年撮影)
タイタンソファ(2012年撮影)

その一方で、「ソファ専門店」ではまだニッチ度が低くて、ネットの検索順位がイマイチでした。

⸺ その頃、ソファの通販って今みたいにありました?

全然。始めた頃は「ネットでソファなんて絶対に売れない」って言われてたけど、九州や東京など遠方からはるばる大阪の堺までソファを見に来てくれる人はいたし、売れることは身を持って実感してる。今後、絶対に競合が増えてくる。

そうなった時に僕らは資本力では勝てないから、ネットの検索順位で勝てるように「ソファ専門店」から「ローソファ専門店」へさらに鋭利にしました。

⸺ さっき仰っていた「ニッチマーケティング」の手法ですね。

そうそう。
ローソファしかないけど、ローソファの種類はいっぱいある。間口は狭めるけど奥行きは広くしておく。
そうして削って削って、“Less is more” な経営を目指しました。

⸺ 商材がローソファであることに、こだわりはありましたか?

自分自身がというより、遠方からはるばる堺のお店に来てくれた人が、ローソファをみた瞬間に「見つけた!」って顔をする。その顔を見るのがすごく好きで。

自分のことをしっかりと考えて、理想を持っている人にしか辿り着けない物ってあるじゃないですか?
僕はそういう人が好きだし、ローソファにはそういう人を惹きつけて喜ばせる魅力があると思ってます。

⸺ 好きな人に喜んで欲しいっていう、すごくシンプルな気持ち。

そうそう。原点はシンプル。
ローソファで喜んでくれる人がいると、デザインも品質も接客も中途半端なことは出来ないなって思うし、新商品のアイディアが生まれるし、シンプルにモチベーションも上がる。

だから、『HAREM』はお客様と作ってきたブランドという意識はめちゃくちゃあります。

ローソファ専門店HAREM つみきソファ 感想
つみきソファ / 京都府 H様
スキップ1ミニソファ / 神奈川県 N様
ピカソソファ / 東京都 H様

⸺ 昔はバンにソファを積んで自分たちで納品してたんですよね。それを聞いた時、手作り感ある会社だなって思いました。

行ける時は。「できることは自分でやる」のスタンスで、既成のものにはギリギリまで頼らず、人間味を大事にしたいと思ってます。

今も本当はそうしたいし、出来ることなら全ての人に直接会って感謝を伝えたい。昔から根本はLOVEなんですよ。LOVE!

⸺ LOVE。

結局は人が好き。LOVE!

⸺ ロボットみたいな質問しますけど、“人が好き”ってどういう感覚ですか?

『HAREM』で言うと、物を通してお客様と関係が出来ていく感じが好き。
頼られると嬉しいし、この人の理想の暮らしを叶えたいって思います。

⸺ その感じは今の接客スタッフにも通じるものがありそうですね。みんな接客が丁寧で、売って終わりではなく、その後の関係構築まで当たり前に考えてる。この接客スタイルも『HAREM』の一つの大きな個性だと思います。

HAREM、東京さ行くだ。

⸺ 2016年に東京ショールームをオープンしましたが、東京進出を決めたきっかけは?

HAREM 東京ショールーム

というか、出さない選択肢が無かった。

誰と話しても「今東京に進出しないのはもったいないよ」と言われるし、「ちょっと物件でも見てみるか~」と思ってふらっと入った不動産屋で、ちょうど今の物件(中目黒ショールーム)がポンっと出てきて、見に行ったらめちゃくちゃ良くて、これはそういう事やな。僕じゃなくて『HAREM』が東京に行きたがってるんやなって。

⸺ 『HAREMに誘われたってことですか?

そうそう!「法人」って言うだけあって、経営してると会社も生き物やなってよく感じます。

だから東京進出は僕や伊藤さん(弊社代表)の意思ではなく、『HAREM』が自分で作った流れだと思います。お役目も感じてたし。

⸺ お役目って?

東京に店舗を出せば、今より遠くの人にローソファを届けられるようになる。その人のこれからの人生を良くできるかも。

堺の店舗で「見たい人は来て」のスタンスで続けることも出来たけど、ローソファや床暮らしがもっと広まる方がいいと思いました。

⸺ そんな東京進出から9年。どんな9年でしたか?

色々ありましたよ。
売上も2年目ぐらいで停滞気味になったし、スタッフが一気に辞めてしまうこともあった。あの頃の僕は経営者の器じゃなかったなって思います。

⸺ 当時の岸宗さんは今ほどオープンに色々な話をしなかったような。

まだかっこよく思われたかった!どうすればカリスマに見えるか本で読んで実践して、頑張ってもだんだん虚しくなって、「本当はどうしたいの?」って内なる声が聞こえてきて。

⸺ そんな本を読んで…悩んでたんですね。

もう、虚無。
そこから聞こえの良いだけの言葉を使うのをやめて、自分の素を出していくようにしました。僕は最終的にLOVEやと思ってるから、包み隠さず「LOVE!」って言うようになったし。

経営者と社員じゃなくて人と人として関わり合わないと、自分の内側と外側がずれていって、続けていけなかったと思う。

⸺ なるほど。最近よく言う「LOVE!」にはそんな理由があったんですね。

ローソファが社会に対してできること。

⸺ それで、内なる声の「本当はどうしたいの?」に返事できましたか?

「ローソファを世界に広めたい」という使命感より、「思いやりのある人が増える」とか「みんなに優しい社会にしたい」と思いがまずあって、ローソファはその手法の一つになれると思ってます。

例えば、
ローソファでリビングの圧迫感を減らせれば、もっとリラックスできるようになるとか、

ローソファでわんちゃんのケガの心配が減れば、飼い主さんが叱ることやストレスも減って、リビングが穏やかになるとか、

赤ちゃんや小さな子供の、転落によるケガのリスクを減らせるとか。

ギスギスした雰囲気を和らげれたり、心のゆとりに繋がったり、そのために良いソファをデザインしてるんだからな。売ってるんだからなって、心の底から思える。

それをするために、今は次のステージ。売上システムや財務システムを作る。
「経営者だから」ではなく「これをしないと優しい社会を作れない」と思って実践できているのが、僕のここ最近です。

HAREM、今どんな感じ?次はどうする?

⸺ 『HAREMもとい『株式会社 NORTH LAND DESIGNS.』は10人に増えました。あれ、思ったより増えてなかった。

いやいや、増えたよ~こんなに増えるとは。

⸺ 10年前から考えるとかなり会社らしくなってきたなと。昔は仕事の合間にオフィスでキャッチボールしてましたよね。何で誰も止めなかったんだ…。

「かっちりした会社を作りたい」という気持ちは今も無いけど、みんなが働きやすい環境を作ろうと思ったら自然とかっちりしてきましたね。

売上管理もシステム化して、社員以外のステークホルダーも増えてきて、随分会社らしくなったと思います。

⸺ 今のHAREMはどんな感じだと思います?

今、階段を一段上がろうとしているのをすごく感じていて。

ここ数年、メンバーが脳みそを柔らかくして、色々なことを考えたり挑戦したりして、それが結果に繋がらなかったとしても、みんなの中に感覚や経験として残っているのを感じます。

岸宗と、本人がデザインしたパズルソファと。

それに加えて、定期的な月報や週報の記録を残して、来年のための情報も蓄積してきて。これによって、確率の高い投資や意思決定が出来るようになってきてる。

今まで『HAREM』はローソファ業界とIT業界の成長の波に乗って成長してきたけど、どちらの波ももう来なくなりました。
いわゆる “成長の踊り場(成長が鈍化する時期)” に長く居た方だと思うけど、もうそろそろ次に進めそう。

僕の中では色々な歯車がカチッとはまってきて、ジャンプ前の屈んでる状態がもうすぐ終わるのを感じてます。

⸺ 2023年の夏にNLDのメンバー全員で会社のMVV(Mission / Vision / Value)を考えるワークショップを開いたじゃないですか?

あの時になんとなく会社を覆っていた分厚い雲が晴れてきた感覚がありました。

これはその時の写真じゃないけど、まあまあこんな感じ。

コロナ禍を機に東京ショールーム勤務以外のスタッフはテレワークになって、コミュニケーション不足も募って来て、お互いに何を考えているのか分かりにくい状況が続いたと思うんですけど、腹割って話してみると「みんな同じ方向向いてるじゃ~ん!って気が軽くなったというか

違う意見にもそれはそれで盛り上がれるし、良いチームだなと思いました。

真ん中で態度のでかい座り方をしているのが筆者です。

⸺ そんな『HAREM(NLD)ですが、一言で言うとどんな集団だと思いますか?

品質が良い…いや、誠意…誠実…そんな人の集まり。

⸺ 「品質」って出てましたが、スタッフと商品に抱いている印象が近いってことですかね。

近い。思いやりがあって優しくて、何かを大切に思えるとか、そんな感じ。

⸺ そんな仲間たちに求めることは?読んでくれてると思うので言っときましょう!

「働かされてる」じゃなく、ここで過ごす理由や目的を持ってて欲しい。
じゃないと、一緒にいる時間がもったいないじゃない!

働いている時間も大切に出来る、そういう人と仕事したいです。

⸺ では最後に。今後岸宗さんが挑戦したいことは?

Japandiのライフスタイル提案をやりたい。これはずっとほんまにやりたい。

北欧が大好きで、日本の古民家に暮らしてて、ローソファLOVE。Japandiは海外由来のスタイルだけど、日本から、僕なりの視点で提案・表現したいと思ってます。

趣味はBlender(3DCGソフト)で部屋作り。妄想はもう始まっている。

『HAREM』と別ブランドを立ち上げる?とか具体的なことは考えてないけど、まだ広まり始めたばかりのこのジャンルで暮らしの提案をするっていうのは、もうめっちゃやりたい。

けど今は、『ローソファ専門店HAREM』で手一杯。焦って始めて尻すぼみでなあなあで終わることは「それは私は許さないわ」って感じ。

今はまず『HAREM』で確実な経営をして、次のステージに進める時にJapandiでガツンとやりたいです。オラワクワクすっぞ。

⸺ 最後は孫悟空になっちゃった!最近の岸宗さんは忙しそうですけど、昔は何度も北欧に行ってましたもんね。

堅実さもワクワクもどっちも大事!Japandiに視線を投げつつ、ローソファで世の中を良くしていきましょう。
がっつりインタビュー、ありがとうございました!

(取材&文:水嶋 美和、撮影:森岡 祐加 / 2024年6月)

この記事のライター:
水嶋 美和

『HAREM MAGAZINE』編集長。
ローソファのことばかり書き続けてもうすぐ10年。つみきソファ愛用歴も9年ぐらいです。
HAREMのライター兼コンテンツディレクターとして、文字周りとコンテンツ発信全般を担当しています。

岸宗さんとはカラオケでPUFFYをデュエットする仲です。

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