ライフデザイナーだいごの四方山コラム
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コラム vol.57
アート・リンゼイというギターの弾けないギタリスト

「もしも、ピアノが引けたなら。。」という歌をどこかで聞いた事がありますが、同様に「もしも、ギターが弾けたなら。。」という事を路上でアコースティックギターをガンガン弾いているストリートミュージシャンを見ると考えてしまいますね。

 アート・リンゼイというミュージシャンをご存知でしょうか?昔、よく坂本龍一と一緒にテレビに出ていた事を記憶されている方もいるかもしれません。そんな彼は「ギターの弾けないギタリスト」なのです。

『アート・リンゼイって誰?』

 アート・リンゼイはブラジルで幼少期を過ごし、後にニューヨークで「DNA」と呼ばれるどこか実験音楽に近い音楽を演奏するバンドで認知されるようになります。

 このバンドの面白いところは、ギターを演奏するアート・リンゼイはギターを弾けない事を始めとして、ドラムの人もドラムを演奏した事がないという初心者の初期衝動で成立していた事でしょうか。

 このアート・リンゼイは冴えない「オタク」または「ナード」的な風貌なのですが、演奏の合間にたまにかき鳴らす重たいディストーションのノイズがとてもパワフルなところが特徴的です。

『ギャップ』

 歌も歌えるアート・リンゼイはブラジルで育った関係からボサノヴァなども歌うのですが、意外にいい声をしているのです。

 ノイズしか出せないギター演奏技術と、美しい歌声のギャップ。なんともいえませんね。

 坂本龍一とコラボしているライブ映像を見た事がありますが、坂本龍一が魂を込めてピアノを弾いてその演奏でアート・リンゼイが歌う。そして、なぜか静かな曲の合間にギターでノイズを出す様はギャグじゃないかと疑ってしまいます。そういえば、坂本龍一はお笑いが好きでしたね。

『正常の中でこそ狂気は映える』

 アート・リンゼイはソロ活動をするにあたり、普通に演奏の上手いミュージシャン達とライブ活動をするのですが、周りの人が上手ければ上手いほど、なぜか彼のギターノイズが映えるのです。不思議です。

 演奏の合間合間に、繰り出されるノイズにいつしか彼のファンは「もっと、そのノイズを聞かせてくれ」と渇望するようになるらしいですが、絵で例えたら「きれいな額縁の中にあるピカソの絵」というところでしょうか。額縁が立派であればあるほど中の作品が際立つような。

 狂人というのは一人でいると「変な人」だけど、しかるべき場所にいると誰よりも映える。そういうメッセージを本能で発信するアートな人、それが「アート・リンゼイ」なのかもしれません。