ライフデザイナーだいごの四方山コラム
四方山コラム
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コラム vol.65
階段は異世界への連絡通路

 階段といえば、階上階下をつなぐための連絡通路として、民家、商業施設問わず誰しもが一度のみならず目にした事のある存在ですね。

 そんな身近にある階段。普段何気なく利用していますが、そこには実は「異世界への連絡通路」という役割があるのをご存知でしょうか。

『階段の種類』

 まず始めに階段の種類について基礎知識のご紹介です。スタンダードな階段は「直階段」と呼ばれています。まっすぐ傾斜がかかったシンプルな階段ですが、例としては学校、商業ビルによく見られるあれです。

 少し変わり種の階段といえば「螺旋階段」があります。これは、渦巻状に上下に階段が伸びているもので、少しおしゃれな建物や、「メゾネットタイプ」のマンション、非常階段などに用いられています。

 また、「ストリップ階段」という階段もありますが、これは踏板のみで構成された階段で、板と板の間から階下の様子が覗けるようになっています。ちょっとしたおしゃれなデザイナー住宅などでたまにこの階段を採用しているのを見かけます。

 大まかには階段といえば以上の3種類が挙げられます。

『階段の目的』

 では、この「階段」とは一体どのような目的があって存在するのでしょうか。寝るため、座るためではもちろんなく、階上階下へ移動するための手段としての役割を担うためにあります。

 そして、階段は建物の形状に合わせた「個性」がそれぞれにあり、例えば狭い昔ながらの古民家であれば傾斜が急であり、踏板の幅が狭いコンパクトなお年寄りには優しくないものが設置されています。また、蹴り上げ部分の高さが短く、踏板幅が広い自転車スロープを併設した地下道階段など一度は目にした事があるのではないでしょうか。

 対象とする利用者が誰であれ、建築物の形状に合わせて人を階上階下へ移動させるために階段の設計者は脳汁が枯渇するまで頭を捻らなければならないのです。

 ただ、単に「移動する」目的以外にも、階段には「空間をねじ曲げる」作用があるという事が今回一番触れたい部分ではあります。

『異世界への連絡通路』

 大阪、ミナミの日本橋の近くに「味園ユニバース」と呼ばれる、建造から70年近く経過したキャバレーのホールがあります。現在はキャバレーとしては利用されてはいませんが、ライブイベントなどの会場として一般に貸し出されています。

 この味園ユニバースは内装がとても豪華で、入場すると年季の入った赤絨毯が一面に広がり、豪華なシャンデリアが鈍く照らす「直階段」を降って行くと、赤を貴重としたソファとテーブルがいくつも設置された巨大なホールへと誘われます。

 ホールには二つのステージがあり、奥の色とりどりのネオンをバックにしたステージと、ホールのちょうど真ん中にあるお客がダンスを踊るためのステージがあり、キャバレーが全盛のときはブラスバンドの生演奏に合わせてお客がダンスを踊っていたようです。

 この「味園ユニバース」。赤絨毯は敷かれているものの、地下のホールと比べると一階部分はとても地味ではあります。しかし、赤絨毯が続く階段を一歩一歩踏みしめていく間に、階下から響く人のざわめき、楽器の音、そして辺りの光量が下がり徐々に自分の中の世界が「日常」から「非日常」へと切り替わるのを感じる事ができます。

 このような娯楽施設の階段は音や光といった感覚に訴える刺激と相まって、階段が「異世界への連絡通路」である事を強く認識できる手助けをしてくれます。

 ただ、実はこの「日常」から「非日常」への切り替えは、知らず知らず全ての階段で起こっているのじゃないかと最近思うことがあります。そして迷い込んだまま、そのままになっているのではないかと。

「実はあなたも知らず知らずのうちに階段を使って”異世界”に迷い込んだままになってはいませんか?」。という夏の終わりの怪談でした。

編集者のつっこみ

編集者のつっこみ

えっ、怖い話だったの!?

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